MkLinux DR1をPower Macintosh

6100にインストールする

竹岡尚三 (AXE, Inc.)
目次
0. はじめに

1. MkLinuxがサポートするハードウェア

2. 今回インストールを行なった環境

3. A/UXパーティションの準備

4. インストールの準備

5. MkLinuxのインストール

6. MkLinuxの起動

7. 最初のログイン(ネットワーク設定)

8. ネットワークの使用

9. CDROMの使用

10. Update960708へのバージョンアップ

11. X windowのインストール

12. rpmコマンドの使用

13. 終りに



0. はじめに


MkLinuxはPower Macintosh(以下Macと略記)で稼働する Linuxである。しかし、MkLinuxはただのLinuxではなく、OSF が作業しているMachマイクロ・カーネルと、その下で動く Linuxサーバから構成された、独特で興味深いOSである。こ のOSには Macユーザでなくとも興味を引かれるだろう。

また、MkLinuxは、PowerMacのPowerPCネイティブ・モード で稼働するフリーな UNIXである点、Apple社の社員が作業し、 Apple社が積極的に配付をサポートしている点もMacユーザに は興味深い。(なお、MkLinuxの開発にはOSFの人間も参加し ている)

以前のApple社はMacOS以外のOSの振興にはあまり興味がな かったなかったようである。しかし、最近の新体制では、オー プンな技術をサポートするらしく、MacOS以外のフリーなOS も積極的にサポートするようだ。

さて、MkLinuxであるが、MkLinuxは NetBSD/mac68kやApple純正UNIXであるA/UXと同様に、MkLinux稼 働後は純然たるMkLinuxマシンになってしまう。

なお、本稿では、MkLinux_DR1(Developer Release 1)をも とに、1996/07/08のアップデイト版を解説する。この MkLinux DR1はNFSも使用できる。また、X Window Ver.11 R6 も含まれ、PowerMacを実用的なUNIXマシンとして使用するの に、十分な機能をもっている。


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1. MkLinuxがサポートするハードウェア


サポートされるハードウェアについてMkLinux DR1 の「ReadmeFirst」ファイルをもとに述べる。

・サポートされるモデル
PowerPC601を使用した
Power Macintosh 6100
Power Macintosh 7100/66, 7100/80
Power Macintosh 8100/80, 8100/100, 8100/110
PowerComputing 100 & 120
である。

Power PC 603/604はサポートされていない。

また、PCI Busはサポートされていないので、いわゆる "PCI Mac"と呼ばれる新しい Power Macはサポートされない。


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2. 今回インストールを行なった環境


ここで、今回、インストールを行なった筆者のマシン構成 を述べる。


CPU Power Macintosh 6100 AV
(AVカード内臓 , Clock 76MHz)
2次キャッシュ 256KBytes
メモリ 16MBytes/ 40MBytes
キーボード Apple Keyboard II
マウス ADB Mouse(Apple社純正マウス),
Logitech社 Codeless Mouse Man,
Model#0106 (3ボタン・マウス)
CDROMドライブ CD300i(本体内臓Apple社純正)
Ethernet I/F Ethernet(本体内臓)
HDD 内臓720MBytes(MacOS専用)
外付240MBytes
(今回MkLinuxのみをインストール)
Macのシステム・
ソフトウェア
漢字TALK7.5


画面表示システムについては注意が必要である。Nuバス PowerMacのAVモデルには、ビデオ・キャプチャー可能なAVカー ドが搭載されている。しかし、先述のとおり、AVカードは、 MkLinux DR1ではサポートされてない。

筆者のPowerMacはAVカード搭載のモデルであった。そのま まインストールを強行したところ、 AVカードでは、MkLinux の画面が出ずインストールを行えなかった。

そこで、ディスプレイを本体マザーボード上のビデオ・シ ステムに接続しインストールを行ったところ、MkLinuxの画 面も表示され、一応の起動は行えた。しかし、DR1のままで は、動作が非常に不安定であった。その後はAVボードを取り 外し、マザーボードのビデオ・システムでMkLinux DR1 を運 用した。

Update960708が出たのでkernel,vmlinux,X Windowを新版 に取り換えた後、AVカードを装着したところ、MkLinuxは非 常に安定して動いている。

MacのAVモデルを使用しているユーザは、Update960708を 使用するべきであろう。ただ、vmlinuxを取り換えるために は、MkLinuxが稼働していなければ不可能であるから、最初 にDR1をインストールしなればならない。そのために、マザー ボードのビデオ・システムにディスプレイを接続するための ケーブル(Appleの高密度ディスプレイ・コネクタへの接続ケー ブル)を入手することなるだろう。

メモリは40MBytesと16MBytesで試用してみたが、どちらも 非常に安定していた。(ただし、16MBでは、X windowは試用 しなかった)

また、Zipドライブも試用してみたが、DR1のMkLinuxのカー ネルの場合がダウンしてしまう。また、 Upate960708のカー ネルの場合は、ハードディスク・アクセスのSCSIコマンドが 失敗する。Zipドライブはまったく使用不可能と言ってよい だろう。

今回のインストールで別途用意したソフトウェアは、

StuffIt Expander 3.5.1
Silver lining 5.5.4
である。

今回、StuffIt ExpanderはBinHex形式(*.hqxとなっている ファイル形式)のデコードとStuffIt形式の解凍のために使用 した。(BinHexはインターネットで事実上標準のバイナリ ->ASCIIエンコード形式。StuffIt(sit)形式はインターネッ トで事実上標準のアーカイブ&圧縮形式。)

BinHexのデコードとsitの解凍ができればどんなソフトウェ アでも良い。例えば、 fetchというMac用ftpクライアント・ ソフトウェアは、ftpによるファイル読み込み中に、 BinHex デコード、sitの解凍を同時に自動的に行える。

Silver liningはMac用の非常に有名なSCSI HDDフォーマッ ト・ソフトウェアである。MkLinuxにはHDD上に A/UX(Apple 社純正のSystemV系UNIX)パーティションが必要である。今回、 A/UXパーティションを作成するために、Silver lining を使 用した。(最新版が1万5千円程度で売られているので、入手 は非常に簡単だろう)

パーティションをメンテナンスするためには、

Apple社のHD SC Setup
Silverlining from LaCie
APS Disk Tools
などのソフトウェアがある。

AppleのHD SC Setup は、 MacOSに添付されているが、純 正HDDにしか使用できないので、あまり役には立たないだろ う。

APSはフリーで、

ftp://jagubox.gsfc.nasa.gov/pub/mac/APS273.sit.hqx
ftp://dunkin.princeton.edu/pub/jagubox/mac/APS273.sit.hqx
で得られるらしいが、筆者は確認していない。

使用したMacOSは漢字TALK7.5である。新しいバージョンの MacOSを手に入れていないため、かなり古い漢字TALKである。 MkLinuxのためには、なるべく新しいMacOSを使用した方が、 良い気がする。英語版MacOS7.5も起動に試用してみたが、当 然ながら、特に問題は無いようである。


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3. A/UXパーティションの準備


まず、HDDにパーティションを用意する。MkLinuxは、 MacOSの管理する世界とはまったく別な世界で動く。ファイ ル・システムもまったく違う物を扱う。

MkLinuxはApple純正UNIXであるA/UXのパーティションを流 用する。これは、NetBSD/mac68kと同 様である。

実は、このA/UXパーティションを準備するくだりは、 UNIX User誌1995年6月のNetBSD/mac68k1.0のインストール と同じ内容である。すでにA/UXパー ティションの扱いに精通されているされている方は、本章を 読む必要はない。

さて、MkLinuxには、2つのA/UXパーティション、 「Root & User」と「swap」が必要である。パーティション を切るために、Silver liningを起動する。

以下、手順を列挙する。

  1. HDDが複数接続されている場合は、HDDを選択する。

  2. もし必要ならHDDのフォーマットも行なう。

  3. すると図1のようなVolume Manager の画面が出る。



    図1 Sliver liningのVolume Manager



  4. 変更したいパーティションのVolume nameの欄にマウ ス・カーソルを持っていきクリックする。

  5. 「Volume」メニューの「Partition Types」を選ぶ。

  6. 図2のようなPartition Types選択画面になる。図2の ごとく、「A/UX Root&User slice 0」を選択する。



    図2 A/UXのルート・パーティション選択



  7. 上記4) 〜 6)と同様に「A/UX Swap slice 1」を作る(図3)。



    図3 A/UXのSwapパーティション選択



これで、A/UXパーティションが確保できる。必要ならば、 作業用の MacOSのパーティションも残しておかなければなら ない。

SwapパーティションはMkLinuxの場合は、32MBytes〜 64MBytesが勧められている。使用するアプリケーションによ るが、 X Windowとemacsを使用するなら、やはり30MBytesは 最低限必要だろう。

Root&userパーティションについては、MkLinuxでは

/のみの1パーティションですべてを入れる場合は
300MBytes
/ と /usrの2パーティションの場合は
/を100MBytes,
/usrを 200MBytes
にするように勧められている。

今回、筆者の場合は、NFSの使用を前提としたので、/のみ 200MBytesとし、 X WindowはNFSの先のファイルシステムに 置いた。Swapパーティションは32MBytesとした。

DR1をインストールし、カーネルのみUpdate960708にした 場合、 /パーティションは、130MBytes強になる。 /tmp,/var/spoolのことなども考慮すると、 / パーティショ ンは最低200MBytes程度が妥当であろう。

MkLinuxのブート・プログラムの設定には、パーティショ ン番号が必要になるので、 /パーティションのパーティショ ン番号を憶えておかなければならない。Silverliningの場合 は、パーティション表示の上から数えた番号がパーティショ ン番号である。(最初を1番としてカウントする)

さて、パーティションができたので、必要ならばMacOSを 入れ、次の作業に移る。


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4. インストールの準備


筆者は、MkLinuxのアーカイブをインターネットより得た。

MkLinuxはISO9660 RockRidge形式のCDROMをマウントする ことができる。筆者は最近はやりのCDROMライタで、 Rock Ridge形式CDROMを作って、それを使ってインストールを行っ た。

MkLinuxはHFS CDROMを扱うこともできる。今回、本誌付録 CDROMのMkLinuxはHFSで収められている。

しかし、HFSアクセスの指定は繁雑である。別なUNIXマシ ンをお持ちの場合は、MacOSでCDROMを読みだし、ファイルを UNIXマシンに送り、NFSを使用してインストールを行うのが、 簡便かもしれない。この場合、Update960708までのインストー ルに必要なファイルはとりあえず、

:MkLinux_DR1:Updates:960708.mklinux:X11R6.bin.tar.gz
:MkLinux_DR1:Updates:960708.mklinux:vmlinux.gz
の2つのファイルである。(DR1リリースのみのインストー ルなら、特にファイルは必要ない)

今回は、HFS CDROMからのインストールを前提として記述 する。

まず、MkLinux専用のインストール・ソフトウェアを準備 する。

MacOSで、付録HFS CDROMをマウントし、

:MkLinux_DR1:FullRelease:
のフォルダを開く。ReadmeFirstやInstallNotesもここに ある。

このフォルダには、MkLinux_DR1.sit.binと MkLinux_DR1.sit.hqxがある。内容は両者とも同じ物である が、通常はMkLinux_DR1.sit.binはftpや通信ソフトによる転 送が前提となっている。

今回はStuffIt Expanderによって、MkLinux_DR1.sit.hqx を展開する。MkLinux_DR1.sit.hqxをStuffIt Expanderにか けると、必要なファイル群が得られる。 (場合によっては、 MkLinux_DR1.sitができる場合がある。その場合は MkLinux_DR1.sitをもう一度、 StuffIt Expanderにかける)

得られたファイルは"MkLinux Developer Release 1"とい うフォルダが作られ、そこに収められている。そのフォルダ 内には、

Readme First
How to Install MkLinux
install MkLinux(Macアプリケーション)
MacFiles(Macファイルの入ったフォルダ)
MkLinuxFiles(Macアプリケーションと巨大なtarファイルの入ったフォルダ)
ができている。

MkLinuxFiles:mklinuxfs.tarは、MkLinuxのファイル・シ ステムに展開されるすべてのものが、一つになったtarファ イルである。このファイルだけで、gccなど通常のコマンド などもすべてインストールできる。

さて、MkLinuxの最初のログイン時には、同時にホスト名 の設定、ネットワーク設定などをしなければならない。Mac のホスト名、IPアドレスをネットワーク管理者と相談の上、 決めておかねばならない。また、ネットマスク、ブロードキャ スト・アドレスはネットワーク管理者に尋ねて正しい値を確 認しておくこと。


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5. MkLinuxのインストール


A/UXパーティションはできた。必要なファイルも揃った。 ネットワーク情報も確認できた。ということで、いよいよ、 MkLinuxのインストールである。

以下、インストール手順を列挙する。

  1. "MkLinux Developer Release 1"フォルダを開く。

  2. Install MkLinuxというアプリケーションをダブルクリッ クして起動する。

  3. すると、図4のようなキャラクタ・ベースの対話ウイン ドウが開く。以下、このウインドウでの対話である。



    図4 インストール対話ウィンドウ


*** You have requested do to an "almost" automated installation of the
    MkLinux O/S for Power Macintosh. You should have partitioned the disk
    in such a way as to have -

    An A/UX Root partition of at least 100 MBs.
    An A/UX Swap partition of at least 32 MBs.
    An A/UX Usr partition of at least 200 MBS.

A/UXのrootパーティションが100MBytes,A/UXのSwapパー ティションが32MBytes,A/UXの/usrパーティションが 200MBytes,必要だと言っている。

If the drive does not have the above partitions, please QUIT (CMD-Q) out
of this program and partition the disk using the above guide lines.

それだけの容量がない場合は、CMD-Qで終了すること。

Make sure you know the SCSI ID of the drive you want to install on.

**** WARNING, THIS PROGRAM IS NOT KIND TO ANY EXISTING DATA ON THE 
PARTITONS TO BE INSTALLED.

インストールを行うディスクのSCSI IDを確認すること。
****インストールされるパーティションの内容について関知しない。

Do you wish to continue? [Y/N] y
続けるか? 「y」 と答える。
What is the SCSI ID of the drive to have MkLinux installed? 1
MkLinuxをインストールするドライブのSCSI IDは? 筆者の場合「1」番であったので、「1」と答えた。
*** A/UX (MkLinux) partitions of SCSI Drive 1

#03 Blocks : 414000  (202.15 MBs) Name < Root file system >
#04 Blocks : 65200   ( 31.84 MBs) Name < Swap >

Partition 3 (size  202.15 MBs) looks to be the appropriate partition for < / >
Do you wish to use this one? [Y/N] y
パーティション3が"/"のようだ、これでよいか? 「Y」と答える。 今回、筆者はハードディスク上にMacOSパーティションを 作らなかったので、パーティション3が"/"となった。"/"の 前にMacOSが入っていれば、この番号は、後にずれるであろう。
Partition 4 (size   31.84 MBs) looks to be the appropriate partition for < swap >.
Do you wish to use this one? [Y/N] y
パーティション4がswapのようだ、これでよいか? 「Y」と答える。
Do you wish to have a seperate /usr file system? [Y/N] n
"/usr"を"/"と別に持つか? 今回は持たないので「n」と答えた。
Do you wish to create additional file systems for this installation? [Y/N] n
他にもファイル・システムを作るか? 「n」と答える。
There are 2 file systems defined.
FS                   Linux Device         Size      
/                    /dev/sdb3            202.15 MBs on partition 3
swap                 /dev/sdb4            31.84 MBs on partition 4
Are these partitions correct? [Y/N] y
2つのファイル・システムが決められた。
これで良いか? 「y」と答える。
THIS IS YOUR LAST CHANCE to abort.

If you choose to continue the following partitions will be destoryed
and replaced with MkLinux filesystems. ANY EXISTING DATA ON THESE
PARTITIONS WILL BE LOST. THIS INCLUDES PREVIOUS INSTALLED MKLINUX FILESYSTEMS.
Are you really, really SURE you want do this? [Y/N] y
これが最後のチャンスだ、実行しても良いか? 「y」と答える。

この後、すべて自動的にインストールが行われる。

具体的には、ファイル・システムの生成、tarファイルの 展開、Macファイルのインストールである。

特に注意すべきこととして、Macファイルは、

「機能拡張フォルダ」に
MkLinux Booter(機能拡張)
Mach Kernel
「コントロール・パネル・フォルダ」に
MkLinux(コントロール・パネル)
がインストールされている。

MkLinuxのブートをコントロールするために、"MkLinux(コ ントロール・パネル)"を使用する。

"Mach Kernel"は、Machのマイクロ・カーネルそのもので ある。MkLinuxのブート時には、このMachカーネルが読み込 まれて動作し、各種サーバをたちあげる。

なお、今回の構成の場合、インストールの所要時間は約30 分程度であった。


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6. MkLinuxの起動


いよいよ、MkLinuxを起動しよう。

「コントロール・パネル」から、「モニタ」を選んで、3 万2千色以下のモードを選ぶ。

次に「コントロール・パネル」から、MkLinuxを撰ぶ。す ると、図5の様なコントロール・パネルが現れる。ここで MkLinuxを選ぶと、以降Macをブートする度に、MkLinuxブー ト・セレクタが出現し、MkLinuxのブートが可能である (MacOSを選択することも可能)。




図5 MkLinuxのコントロール・パネル



ここで、システムをリブートすれば、MkLinuxブート・セ レクタ(図6)が現れる。ブート・セレクタは10秒でタイムア ウトし自動的にMkLinuxのブートに移る(MacOSを起動する必 要がある場合は、ここでMacOSを選択すればよい)。




図6 MkLinuxのブート・セレクタ



以降、UNIXらしい黒地に白のキャラクタ・ベースの画面が フルスクリーンになり、 MkLinuのブートの様子が表示され る。特に問題は出ないだろう。

「login:」プロンプトが表示されれば、MkLinuxが起動し ている。

さて、MkLinuxコントロール・パネルの「Custom」ボタン をクリックすると、SimpleTextが起動し、以下のような内容 のファイルを開く。(インストール直後には、この作業は必 要ない)

   # 'rootdev' defines the location of the root device.
   # This is the only supported option (at the moment).
   #
   rootdev=/dev/sdb3

ここで、/dev/sdb3がLinuxをブートするディスクとパーティ ションを示している。ここで、'b'がSCSI IDが1、'3'がパー ティション3番であることを示す。ディスクのSCSI IDを変更 したり、パーティションがずれた場合には、「Custom」ボタ ンを押下し、これらの項目を変更する。

インストール直後は、これらのディスク、パーティション 情報は、インストーラにより、正しくセットされているので、 SimpleTextを終了するだけでよい。


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7. 最初のログイン(ネットワーク設定)


「login」プロンプトに対し、"root"と入力し、root でロ グインする。ただし、なぜかApple Keyboard IIでは、キー ボードがCapsロックのかかった状態になっている。「Capsロッ ク」を2度押下して、 Caps ロック状態を解除して、"root" と入力しなければならない(しかし、例えばTEC Partsの Macwayキーボードであると、この現象は出ない)。

rootでログインすると、先述のとおり、ネットワーク設定 をしなければならない。

以下、ネットワーク設定の対話である。

Do you want to set up networking capability? [y/n, default=y] >>> y
ネットワーク設定をするか? 「y」と答える。
Please enter a hostname (it must be unique on a network): axeav
ホスト名を入力? ここでは"axeav"と答えた。
Please enter a domain name [none]: axe-inc.co.jp
ドメイン名を入力? ここでは"axe-inc.co.jp"と答えた。
Please enter a primary nameserver address [none]:
プライマリ・ネームサーバのアドレスを入力?
Please enter an Internet address (e.g.130.43.2.2): 192.47.226.22
IPアドレスを入力? ここでは"192.47.226.22"と答えた。
Please enter an Internet Broadcast address: 192.47.226.255
ブロードキャスト・アドレスを入力? ここでは"192.47.226.255"と答えた。
Please enter a netmask [none]: 255.255.255.0
ネットマスクを入力? ここでは"255.255.255.0"と答えた。
Please enter a gateway address [none]:
ゲートウェイ・アドレスを入力?

hostname is axeav
IP address is [192.47.226.22];  broadcast address is [192.47.226.255]
netmask is [255.255.255.0]; gateway address is [none]
domain is [axe-inc.co.jp]; namserver address is [none]
OK to set up networking with these values? [y/n, default=y] >>> y

と表示されて終り。

これでEthernetも使用できるようになった。

[root@axeav /root]# ping 192.47.226.1
などとして、他のホストにパケットが届くことを確認できる。

必要に応じて、/etc/hostsにホストを登録すれば、ネット ワーク・コマンドでホスト名で指定できる。

次に、タイムゾーンの設定をしておこう。

すでに/etc/localtimeが存在するのでそれを消す。次に、

[root@axeav /etc]# ln -s /usr/lib/zoneinfo/Japan /etc/localtime
とする。これで、タイムゾーンが日本に設定される。ただ し、 dateコマンドなどでは、9時間進んだ時間が表示される。 MkLinuxでは、Macの時計をグリニッジ標準時に設定しておか なければならないようだ。

あとは、vipwコマンドでユーザを追加するしたりするのは、 通常のUNIX と同様である。

MkLinuxをシャットダウンするには、 でよい。 と表示されたあとにMacを再起動したい場合は、[コマンド] +[Control]+[PowerKey]を押下する。このキーの組合せは、 MkLinux動作中も大抵の場合、強制リセットとして作用する。 ただし、ディスクのsyncもシャットダウン手続きも行なわれ ないので、非常時以外は使用しないように気をつけなればな らない。


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8. ネットワークの使用


MkLinuxはEthernetが使用できる。

telnetもftpもちゃんと使用できる。ただし、rloginはパ スワードが表示されてしまう。また、rloginはあまり調子が 良くない。どうやらあまりテストされていないようだ。

また、MkLinuxはNFSも使用できる。

DR1のままであると、少し調子が悪いような感触であった。 そこで、NFSマウント時にオプションで、readサイズと writeサイズを両者とも1024にすると、調子が良くなったよ うだ。

具体的には、

 [root@axeav /]# mount -t nfs -o rsize=1024,wsize=1024 serv:/usr1 /usr1

とする。また、/etc/fstabファイルに

  serv:/home1     /home1   nfs     rw,rsize=1024,wsize=1024,soft 1 0
と記述すれば、MkLinux起動時に自動的にマウントされる。

筆者は、NFSファイル・システムにX Windowやソースを置いている。


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9. CDROMの使用


CDROMはISO9660 RockRidge形式でも、Mac HFS形式でも使 用できる。ただし、マウントして、通常のファイル・システ ムとしてアクセスできるのは、ISO9660 RockRidge形式だけ である。

ISO9660 RockRidge形式をマウントするには、
 [root@axeav /]# mount -t iso9660 -o ro /dev/cdrom /mnt

とする。また、/etc/fstabファイルに

  /dev/cdrom      /cdrom  iso9660 ro 0 0

と記述しておけば、

 [root@axeav /]# mount /cdrom

とするだけで、cdromがマウントできる。

  ISO9660 RockRidge CDROMは快調に動作する。

Mac独自のHFS CDROMは、ファイル・システムとしてアクセ スするのではない。ちょうどフロッピ・ディスクのmtools の様に、各コマンドがHFSのファイル構造をたどって、ディ レクトリ表示やファイル読み出しを行う。

HFS CDROMをアクセスするには、まず、

[root@axeav /]# hmount /dev/sdd3
とする。この場合、CDROMのSCSI IDが4、HFSパーティショ ン番号が3だと仮定している(内臓CDROMドライブを使用しで、 標準的なHFS CDROMの場合はこの値でよい)。

ディレクトリをみるには、
[root@axeav /]# hdir
とする。
アクセスしたいディレクトリに移動するには、
[root@axeav /]# hcd :foo
とする。
ファイルをコピーするには、
[root@axeav /]# hcopy bar /tmp/
とすると。/tmp/barができる。

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10. Update960708へのバージョンアップ


カーネルをUpdate960708へのバージョンアップするには、 2つのファイルに関して行う。一つは、Linuxファイル・シス テム上の /mach_servers/vmlinuxを新版に置き換える。 もう一つは、Macファイルの"Mach Kernel"を新版に置き換える。

  1. vmlinuxの置き換え

    HFS CDROMから、vmlinuxの新版を読み込むには、

    [root@axeav /]# hcopy :MkLinux_DR1:Updates:960708.mklinux:vmlinux.gz /tmp
    [root@axeav /]# gunzip < /tmp/vmlinux.gz >/mach_servers/vmlinux

    とする。これで展開されたvmlinuxが/mach_servers/にお かれる。(念のため、先に旧版をmvしてvmlinux.olgなどとし て保存しておいた方がよいかも知れない)

    NFSが使える場合にも、そのままNFS上のファイルをgunzip コマンドで/mach_servers/vmlinuxへ伸長すればよい。


  2. Mach Kernelの置き換え

    Mach KernelはMacファイル・システムのファイルなので、 MacOSで作業する。

    StuffIt Expanderで
    :MkLinux_DR1:Updates:960708.mklinux:Mach_Kernel.hqxを デコードすると、新しい"Mach Kernel"が得られる。そのファ イルをシステム・フォルダ内の「機能拡張」フォルダへドロッ プする。「古いファイルと置き換えるか?」というダイアロ グが出るので、「OK」を選んで、置き換える。

以上で、Machカーネルとvmlinuxが960708版になる。これ 以降AVカードでも、MkLinuxが動作するようになる。

DR1では、コンソールの行数が自動的には正しくセットさ れなかったが、Update960708 ではなにもしなくとも、正し い行数がセットされるようである。


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11. X windowのインストール


HFS CDROMから、vmlinuxの新版を読み込むには、

 [root@axeav /]# hcopy :MkLinux_DR1:Updates:960708.mklinux:X11R6.bin.tar.gz /tmp
とする。
次に、
 [root@axeav /]# tar -C / -zpxvf /tmp/X11R6.bin.tgz
とする。

展開が終ったら、すぐにX windowが使用できる。
/usr/X11R6/binにcdした後、

       [root@axeav /usr/X11R6/bin]# xinit
とすれば、X windowが起動し、xtermが開く。
そのxtermで
       [root@axeav /usr/X11R6/bin]# twm&
とすれば、twmウインドウ・マネージャが起動する(図7)。




図7 Mklinux で漢字も表示できる



X windowをシャットダウンするには、最初に開いたxterm を終了する(具体的にはxterm上のbashをexitすればよい)。

あとは、~/.profile, ~/.cshrcなどのpathに "/usr/X11R6/bin"を付け加えておく。

もし、パーティションが一杯で、筆者と同様、NFSを使用 する場合は、X11R6の展開前にNFSファイル・システムのディ レクトリに向かってシンボリック・リンクを張っておく。具 体的には以下の通り。

NFSファイルシステムが、/usr2にマウントされていると する。

  [root@axeav /]# mkdir -p /usr2/mklinux/X11R6
とし、展開先ディレクトリを作る。
  [root@axeav /]# ln -s /usr2/mklinux/X11R6 /usr/X11R6
とし、シンボリック・リンクを張る。同様に、 /usr/local/bin等もNFS先のファイル・システムへ作れば、 ローカルなハードディスクは、少しでよい。

X11R6.bin.tar.gzには、X windowサーバ、クライアントの バイナリだけではなく、X11R6のライブラリ、フォントなど もすべて含まれている。このアーカイブを展開するだけで、 X11R6 が使用できる。(ktermは含まれていないが、漢字フォ ントは含まれているので、他機種のktermをMkLinuxのXサー バに表示して、漢字を読むことはできる)

960708版のX windowは3ボタン・マウスを認識する。現在、 MacのADB用3ボタン・マウスは Logitech社製のものがほとん どであろう。筆者もLogitech社の無線式3ボタン・マウスを 入手して試用した。結果は非常に好調である。3ボタンによっ て、X windowがワークステーションと同様に使用でき、その 価値は高い。

3ボタン・マウスがない場合は、適当なキーを中ボタン、 右ボタンに割り当てる事ができる。/usr/X11R6/bin/X11が shell scriptなので、そのファイルの最後の方にあるxinit の起動行に


xinit -geometry 60x8+0+0 -sb -fn 6x10 -T "console" -e $X11START \
        -- ${X11BINDIR}/Xmklinux -optionmouse -middlekey 130 -rightkey 128 \
        nologo v $* >> $DEBUGLOG 2>&1

というように、 -optionmouse -middlekey 130 -rightkey128 を付け加えればよい。ここで、130や128はキーコードであ る。しかし、このキーコードによる指定は、キーボードのハー ドウェアに依存しているらしく、Apple Keyboard IIと Macwayでは同じように指定できない。筆者の場合は、3ボタ ン・マウスが快調なので、この問題は深く追求していない。

なお、AVカードを3万2千色モードで使用すると、 X windowの表示色がおかしい。256色モード以下ならば、特に 問題無いようだ。


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12. rpmコマンドの使用


rpmとは、 Red Hat Package Managerである。CDROMやイン ターネット・アーカイブにある*.rpmファイルには rpmコマ ンドを適用する。

CDROMの
:MkLinux_DR1:FullRelease:MkLinuxFiles:rpm.bin:には、 多くのパッケージが入っている。これらを展開するには、上 記と同様にファイルをCDROMより取り出し、その後rpmコマン ドを使用する。(rpm -i とする)

また、:MkLinux_DR1:Updates:960605.hfsutils: などにも アップデイトが入っている。

ここでは、Updates:960605.hfsutils:の hfsutils-1.13b-1.ppc.rpmをアップデイトしてみる。

    [root@axeav /]# rpm -U hfsutils-1.13b-1.ppc.rpm
とすると、hmount等のコマンド、マニュアル類がアップデ イトされる。
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13. 終りに


ついにPowerMacでもフリーなUNIXが利用できるようになっ たかと感慨深い。

MkLinuxはOSFのMachカーネルが動き興味深い。

また、PowerPCのUNIXマシンというのも、巷では珍しいで あろう。

PowerMac6100@76MHz(2ndキャッシュ付)上で、 dhrystone1.1を用いて、計測した結果(cc -O4 -DREG=register)、 100000程度であり、 57VAX-Mips程度の 性能となっている。PowerPC搭載のUNIXマシンとして、妥当 な性能であろう。ちなみに筆者が使用しているIBM社の RS/6000 Model40はPowerPC601@66MHzで、60VAX-Mips程度で ある(OSはAIX、ccはIBM社製を使用)。

このMkLinuxを、まだ使い込んではいないが、いきなりカー ネルがコケてしまうようなことはなく好感がもてる。

Apple社も新体制になり、新しい技術に期待のもてる PowerMacである。MkLinuxで使うか、MacOSで使うか、Macユー ザに嬉しい悩みが一つ増えた。

(たけおか しょうぞう AXE, Inc.)

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